拠点概要

 拠点形成概要及び採択理由 【PDF】 (日本学術振興会

 

[拠点形成の目的]

 「少子化」「高齢化」が問題にされて久しいが、決め手になる解決策は出ていない。これは現在の社会科学が、現代世界で進行中の家族と私生活の劇的な変容(「危機」とよぶ論者もいる)という問題を、正しく分析する理論枠組も方法も持ち合わせていないという事実を露呈している。こうした変容の原因は、単なるモラル の低下や政策的失敗にあるのではなく、高度近代(high modernity)の到来とグローバル化が、人間生活の再生産のあり方や人の生死や一生のあり方を根本的に変容させたことにあると考え、その変容の全体を正面からとらえる社会科学的方法を開発することが必要である。私生活の変容は、ワーキングプアを生み出す経済変化、大規模な国際人口移動(ディアスポラ)、社会福祉制度の構築や破綻、市民権の変容などのマクロな構造変動とも深く関連している。

 本拠点形成の目的は、こうした現代世界の全体的社会変化を「親密圏と公共圏の再編成」ととらえ、社会学を中心とする関連社会科学の総合によって分析・解明する新しい学問分野を開拓して実践的政策的提言を行うと共に、この新分野の開拓者たりうる人材を養成することにある。とりわけアジア地域に共通する超低出生率、急速な高齢化、家族主義的福祉の限界、国際移動の女性化などの問題に焦点を当て、国際共同研究を実施して、21世紀アジア社会の生活と人的再生産を支えるための親密圏と公共圏の再構築について提案する。人材育成面では、学際教育プログラムの実践、アジアおよび欧米地域の海外パートナー拠点との国際的共同による大学院教育の実施と、国内外の行政機関やNPO/NGOでのインターンシップにより、アジア的視点と欧米的視点を兼ね備え、世界とくにアジアの現実についての深い認識をもち、「親密圏と公共圏の再編成」という課題のために、世界のどこでも、アカデミズムでも行政やメディア等でも活躍できる人材を育成することを目的とする。海外パートナー拠点との学生・教員の恒常的交流は、EUにおける大規模な教育交流プログラムであるエラスムス計画をアジアにおいても実施するための先駆的・実験的な計画として「アジア版エラスムス・パイロット計画」と位置づける。その結果として、アジアの次世代の社会科学研究を担う国境を越えた同窓生ネットワークを構築する。また若手研究者とりわけ女性研究者や育児中の男女研究者の研究と生活の両立支援のプログラム「リサーチ・ライフ・バランス」を若手研究者自身の手により開発し実施する。

 
 [拠点形成計画の概要]

(1) 社会科学の学際的総合、(2) 海外パートナー拠点とのグローバルネットワーク、(3) 社会に開かれたアカデミズムを本拠点の独自性の3本柱として、教育研究両面での計画に活かしていく。

 1 「海外パートナー拠点」との連携

 アジアおよび欧米圏の複数の大学・研究機関を「海外パートナー拠点」として、それらとの密接な協力のうえに教育研究計画を実行することにより、アジア的視点と欧米的視点を兼ね備えた若手研究者育成と、アジアで発想した枠組みの世界への発信を実践する。

 2 人材育成の計画

「親密圏と公共圏の再編成」に関する学際教育プログラムの構築と実践

 社会学を中心に社会科学諸分野の教育を課題に即して統合するカリキュラムを作成し実施する。

 人材育成のグローバル化

 アジアおよび欧米の海外パートナー拠点との間での学生・教員の恒常的なエクスチェンジと国際的相互的単位互換制度の確立により、大学院教育の国際的共同を実現する。一人の学生がアジア拠点と欧米拠点の両方での留学経験を積むことを原則とし、アジア的視点と欧米的視点を兼ね備えた若手研究者を育成する。また、若手研究者国際ワークショップを毎年開催し、そこでの出会いから生まれる国内外の若手研究者のイニシアティブによる国際共同研究プロジェクトを推進する。

 ・リーディングス『アジアの親密圏と公共圏』の作成

  アジア発の概念と分析枠組みを共有した人材を育成する教材として、アジア各地域の基礎的研究成果を国際共同編集により刊行する。

 インターンシップ

  国内外の行政機関やNPO/NGOなどでの学生の研修、およびそれら機関職員の大学院での研修を実施する。

 若手・女性研究者の支援と「リサーチ・ライフ・バランス」

  若手研究者一般の支援と並んで、「親密圏と公共圏の再編成」の実践として、出産・育児期の男女研究者の支援プログラムを構築し実施する。

 ・キャリアパス支援: アカデミズムのみならず行政、メディアなどへの就職も支援する。

 3 研究活動の計画

・ 国際的学際的共同研究

 学際的構成の5つの研究班をおき、それらと海外パートナー拠点研究者との共同で国際共同研究プロジェクトを多数推進する。企画と実施には若手研究者のイニシアティブを重視する。

 若手公募研究プロジェクト助成: 国内外・学内外の若手研究者を対象に関連テーマでの研究を公募し助成する。

 リサーチ・ライフ・バランス:  若手研究者自らが支援プログラム開発を研究プロジェクトとして行う。

 研究成果の多言語での出版:成果発表はすべて英語と日本語で刊行するが、中国語、韓国語、タイ語など他のアジア諸言語を併記する多言語的編集を行う。

 4  「アジア親密圏/公共圏研究センター」の設置

教育研究両面の機能をもち、アジアを中心とする研究者ネットワークの結節点としても活用できるセンターを文学研究科内に設置する。

 

 

 

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